私の手のひらに、一冊の句集が乗っている。
そう、片手に乗るほどの小さな薄い俳句同人誌「あすてりずむ」。
ネットプリントの俳誌。
これは、俳人三人の合同句集である。
それぞれ違う結社に所属する三人。
その内のお一方、
ある日、Facebookに俳誌のお知らせ。
購入先はコンビニになっている。
アナログ人間の私には、とんと理解できなかった。
モタモタしているうちに一号のダウンロード期間が終わってしまっ
そして再びFacebookに第二号発行のお知らせ。
迷っている暇はない。
と、そこで他力本願な私は、夫に頼んだ……。買ってきてと。
そして夫はピラピラ一枚の紙を持って帰ってきた。
なんでも、チケットなどを買う機械に番号を入力したら、
その一枚の紙を切ってパタパタ折ると、可愛い冊子の出来上がり!
と、前置きが長くなりましたが、こうして無事に手にいれました。
あすてりずむ、第二号。
七月七日発行。七夕に合わせてか、表紙は夜空に流星群。
ここで、心に響いた句を紹介させていただきます。
眼鏡置き眼鏡休ます昼寝かな 後閑 達雄
私も眼鏡をかけている。以前はコンタクトだったが、
そう、目が疲れることは考えたことはあっても、
作者は優しい人なのだ。
眼鏡をひらがなで書いても良かったかな、とも思った。
めがね置きめがね休ます昼寝かな
見た感じの印象が柔らかい、というだけの事なのだけど。
勝手を申しました。
白日傘きりんの前で廻りけり 後閑 達雄
きりんを眺めている作者。作者ときりんの間に、
作者の視線の先には、日傘、きりん、青空。
時折日傘はくるりとまわる。爽やかで気持ちがいい。
でも、作者の視線は遠い昔に向いているように感じる。
作者の母親の若い頃とか、子ども時代の幸せな記憶。
動物園って、
だからこの句をみると、
線香の微かな反りや梅雨に入る 金子敦
もともと、匂いや気温、湿度を感じる文章や句が好きである。
線香がある生活。
線香って持ち上げた時に折れてしまいそうに頼りない。
一本つまむのに少し神経を使う。ちょっとした真剣な一瞬。
線香をつまむ一瞬って、
季節の移り変わりに、時間が悲しみを薄めてくれるようでもあり、
梅雨…というのが、また違う悲しみに入っても行くようでもあり。
静かな時間を感じる句。
紫陽花の毬に触れたる保冷箱 金子敦
紫陽花に保冷箱。
雨ざらしになっている保冷箱に、こんもり育った紫陽花。
ちょっと雑多な感じ。こんな庭、もしくは店先、
紫陽花って思い出に浸るような句をよく見かけるけど、
紫陽花と白い保冷箱との色のコントラストも綺麗。
白玉や相方と呼ぶひととゐて 小早川忠義
時々、妻や夫のことを「うちの相方」と云う人がいるけれど、
私は、相方と言われると、
白玉と相方、
ああ…。でも、男同士で白玉は食べないかしら?
故郷への花道として五月富士 小早川忠義
「あすてりずむ」は、作者がそれぞれ、
それによると、
親の介護をするために。
多分、その人への句なのだろう。はなむけの言葉として、
エッセー文を読んでからこの句を読むと、
さて、次のあすてりずむは10月頃になるらしい。
今度は自分で買いに行こう。
また、小さな優しい世界に触れるのが楽しみである。
俳句同人誌「あすてりずむ」
金子敦・後閑 達雄・小早川忠義
☆久才透子(きゅうさい・とうこ 俳句集団【itak】幹事 北舟句会)
久才透子様
返信削除お心のこもった、あたたかい鑑賞文を書いていただき、
感激しております。どうもありがとうございます!
第3号も、よい句を発表出来るように頑張ります。
暦の上では秋ですが、暑さ厳しい日が続いておりますので、
どうぞ、くれぐれもご自愛なさってくださいね(^^)
金子 敦様
返信削除コメントいただきありがとうございます!
返信が遅くなり、申し訳ありません。
金子さんの句が、大好きです。
これからのご活躍も楽しみにしています。
そちらは残暑が厳しいようなので、金子さんこそ体調に気をつけてお過ごしくださいね。
鑑賞文を読んでいただき、またコメントも頂き感謝しています。
ありがとうございました。
久才透子