2012年8月7日火曜日

葉子が読む(その3)~第二回イベントの俳句から~


葉子が読む (その3) 「色」

今まで「風」「音」を詠んだ句を読ませて頂いた。
今回は「色」を取り上げてみた。
「色=色彩」の特性の中に「光」がある。
光のない世界に色は存在しないのだ。光と色。
そもそもは太陽が生んだのが色であったのだ。
私達はそういう星に住んでいるのだという事をつくづくと感じる。


 色 その1

七色がそろうまで待つ虹の窓 瀬戸優理子 


メルヘンだなぁ。高校生のころ「詩とメルヘン」という雑誌を買っていた。
そこに載っていそうなイラストを思った。葉祥明の絵を思い出した。
掲句を何度か読んでいるうちにちょっと虹の実体を考えた。
七色がそろうことがあるだろうか?つい不思議に思った。
虹が七色なのは世界中では少数派だそうだ。
しかし日本人ならば七色といえば虹を想像する。

俳句は詩である。細かいことは置いてゆこう。なによりも惹かれたのは
「虹の窓」だから。作者の家にはきっとよく虹を見ることがある「窓」があるのか
それとも作者の心象風景なのか・・・・どちらでも良い。この「虹の窓」という
措辞が想像と期待と風景とを言い表している所が魅力だ。
その窓に頬杖をつきながら空を眺めている「あなた」を思う。
(あなたってあなたです。世界じゅうのあなた。)
そういえば、あたしの子供の頃「草の窓」と名付けた窓があった。
ひねりのない名前で裏庭の草しか見えない窓だった。


 色 その2

後れ毛やあじさい夜毎色深め 高木 晃


一言も浴衣姿と言っていないが、浴衣姿の女性が見えるようだ。
あじさいの色とは夜、深まってゆくのか。そうだったのか!とみょうに納得してしまう。
夜毎に深まる色にはうなじの後れ毛の美しい浴衣の女性が一役かっているのだろう。
後れ毛の違い、うなじの違い、匂いの違い・・・・女性の個性があじさいの色を深めてゆく。
なんと艶めかしいことだろう。
土壌の成分により色が変わる、と言われているがそんな話はあじさいには似合わない。
じっと色を深め、額の中に小さな星が降りてくるのを待つのがあじさいなのだ。





色 その3

墨吐いて夢の真ん中夏の烏賊 平 倫子


夏の烏賊釣り船の灯りは陸から眺めるとまことにロマンティックだ。
その船で烏賊と烏賊釣漁師との闘いがあるとは想像し難い。確かにテレビなどで
烏賊釣船の漁師が烏賊を釣り上げているところを見たことはあるがやはり、遠くから
眺める烏賊釣船の灯りの方が身近だったりする。
作者はそんな現実の烏賊が釣上げられまいと墨を吐いている姿を思ったのだろうか。
そこに目を持ってきた作者は面白い。お刺身にされて食卓に上がった夏烏賊は
夢の真ん中にいたんだ。なかなか読み難い掲句ではあったが、何度も読むうちに
上五の「墨吐いて」と中七「夢の真ん中」の取り合わせがなんとも面白く
ロマンチックな現実派みたいな印象と感じた。




色 その4

雨重し白薔薇特に首を垂れ 五十嵐 秀彦


重い雨。なぜ「白薔薇特に」なのだろうか。
反ナチ運動の白薔薇?薔薇戦争のヨーク家の白薔薇?などチラリと
考えたがまず違うだろう。
白い薔薇だけがそこにあったのではないだろうか?
いや、なかったのかも知れない。心象風景であるかもしれない。
雨に打たれ花びらが痛み首を垂れる白薔薇。
そこに、作者は何を見たのか。
あたしは、棺に入れられた白薔薇を思った。
少々思い切った切口だったかもしれないが
ここは、鑑賞者という自由な特権で読ませていただいた。




色 その5

緋目高を追ひて朱線の流れけり 籬 朱子



緋目高は鑑賞魚のエサとして販売されているというが
掲句の緋目高は違うだろう。
色の濃い緋目高の楊貴妃目高が水槽・・・・いいえ金魚鉢の中で泳いでいる様を
作者が目で追っていると、残像が朱線となり流れているという。
なんとも涼やかな一句だろう。
金魚でもなく、緋目高であるところが作者の嗜好の品が伺える。

 


2 件のコメント:

  1. 葉子さん
    拙句のご鑑賞、ありがとうございます。
    『詩とメルヘン』懐かしいですね~♪
    中・高校生時代、幾度か投稿した経験も(1次選考通過止まりでしたが)
    本当は七色が揃うことなどないだろう、とココロのどこかで思いながら、やっぱり完璧な虹を見たくて待っている・・・そんな大人のオトメゴコロなのでした。

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    1. 優理子さん
      コメントありがとうございます。
      何か奇跡のように「ある日」七色の虹が渡るかも知れませんものね!
      虹ってどうして嬉しいのでしょう。今や不思議なことでも何でもないのに
      虹を見ると嬉しくてたまりませんよね。
      その分、待ち焦がれるのかもしれませんね。

      詩とメルヘン懐かしいですよね。
      あたしは創刊間もない頃でした。いちご新聞とか。
      年齢がバレちゃう~^^

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